とむすけ

 野良猫にエサを与えているオバサンが青い顔をして相談にきました。 「おとといから9匹猫が死んでいた。私の他にエサをやっている人も3匹の死骸を片付けた、っていうから、もう12匹も死んでしまった・・・。 エサをやるなって再三苦情を言われてたから、きっと毒をまかれたんだよ」と言うのです。 その翌日、オバサンはまた来て、「1匹だけ生きてた子を見つけたから、病院へつれて行って」と言うのです。
 キャリーバックの中には生後半年ほどのキジトラの子猫。だいぶ具合が悪そうでした。 そしてオバサンはエプロンのポケットから1万円札、千円札、小銭まで取り出して、 「ノラたちに不妊手術してやろうと思って、ためたお金なの。この子に使って・・・」と涙声で言いました。  動物病院で検査を受けると、原因は毒物を食べたからではなく、最も恐ろしい伝染病「猫パルボ」に感染したためでした。 野良猫密集地域に伝染病が入り込むと、あっという間に大惨事になりかねないので、エサを与えている人は、不妊手術だけでなく、 できればワクチンも受けさせるべきです。
 何とか生き残ってもらいたい、という願いを受けて、この子猫は本当に頑張りました。「まだ具合悪いはずなのに、 近づくとケージの扉にスリスリしてくるんですよ」と入院先でも看護婦さんに可愛がられました。そして10日ほどして退院。 退院後も風邪をひいてしまってまた具合が悪くなったのですが、やっぱりケージの中からスリスリしてくるとむすけのけなげさは、 死んでいった多くの仲間たちの分も愛されるように、神様が授けてくれた天分のような気がします。  現在はみつまめ、クリと仲良しトリオを結成。 トップページに登場の小学