「捨てることは、殺すことです」

 室内で可愛がられていた猫達だと思われました。石巻霊園の東屋の屋根の下に、猫の家族が捨てられました。イケメンでイクメンの真っ白なパパと、ま だ少女のように小柄なキジトラのママ、生後4カ月ほどの子猫が6匹。そして、ママの華奢な体のお腹だけ異常に膨らんでいて…次の出産が近いことがわかりま した。

東屋には、この子達が使っていたと思われるベッドやタオル、急ごしらえの板をガムテープで貼り合わせた小屋が置かれ、「よろしくお願いします」の置き手紙もあったとか…。

子供達は無邪気に追いかけっこやプロレスごっこ…。この子達の存在を知って、エサを持って来てくれる人達もいました。

けれど、ママのお腹は地面につきそうです。耳や瞼にはダニが付いて、痒くて掻くから毛が抜けて血が滲んでいました。

パパは、この山に前から棲んでいる野良猫を追っ払って家族を守ろうとしていました。しかし、夜になればパパもかなわないキツネやハクビシンが出てくるかもしれません。夜明けと共にカラスも獲物を狙って巡回しています。

決心しなければ、後悔しても取り返しがつかなくなると感じました。状況は刻一刻と悪くなり、どんなアクシデントが起きても不思議ないので す。この事実を伝えてくれた方、エサを与えに来てくれる方…本当は何人かで手分けして預かることができれば助かるのですが、たいてい返事は「すみません」 です。

私の家は行き場のない猫でいっぱいになり、「いい加減にしろ」と怒っていた家族ももういません。仕事に行く暇もない生活を『本末転倒』だ と言った人もいました。しかし、そこに残酷な死の危機に瀕している命があることを知りながら、諦めようとすることの方が本末転倒だと私は思います。「どう にかならないか?」、「何か方法はないか?」と精一杯の知恵と勇気をかき集めるのは、人間の本来の姿勢のはずです。

もう置ける場所がなくて洗面所にゲージを重ねて、廊下にまで置いたから、体を横にして通らなければなりません。風呂に入るのが一苦労です。でも、そんな不便は命との天秤に掛けるほどのことではありません。

猫に家を占領されて、ゲージの中でトイレをひっくり返され、ペットシーツやタオルを水浸しにされて汚されることが繰り返されるなど、取る に足りないことです。あの人気のない山に置き去りにされ、雨風に打たれ、日に日に弱って、傷つき、病んで、心も荒み、1匹欠け、もう1匹消え…という悲惨 な風景から連れ出すことができたことに、安堵のため息が出ます。しかし、これで、家にいる猫と犬はもはや90匹。物理的に限界。次に置く場所はありませ ん。

ママとパパには、ラメが付いたエナメルの首輪が付いています。若い女性がアパートででも飼っていたのでしょうか?いずれ妊娠するだろうこ とは知っていたはずです。妊娠に気づいてからでも手術はできました。何もしないでまた妊娠させて、8匹の命を山に捨てた飼い主は、自分のしたことを「どう しようもなかった」 とでも言うのでしょうか…?「動物を遺棄したら50万円以下の罰金、虐待したら100万円以下の罰金か1年以下の懲役の犯罪」です。猫を飼ったら、不妊・ 去勢手術を施して、望まぬ命は生ませないことが飼い主の責任です。
アニマルクラブはそのために、低価格で手術が受けられる『不妊予防センター』を運営しています。そして、生まれてしまった命には、家族の一員と して一生大切に育ててくれる里親を募集します。命に対してまじめに向き合い、責任が取れる人だけが飼い主になれるのです。そして、「かわいそうだけれど、 自分は飼ってやれない」と言う人達は、できることを考えて小さなことでも実行していってください。そうしないと、動物達の不幸は延々と続き、動物愛護団体 は重荷に耐え切れなくなって存続できなくなります。

大きなお腹で捨てられて、困り果てていたお母さん。
小屋やベッドを置いていった飼い主。そんなことで、この子達を守ることはできません。
あどけなくきれいな子猫の体にもダニが…。野生動物もいる山は危険がいっぱい。
東屋の石の地べたに撒かれたキャットフード。エサを与えるだけでは解決しない問題を、協力と分担で世に問うことも必要です。
何とか洗面所に置いたゲージの中で寄り添う兄妹に、「大丈夫だよ」と声を掛ける。
この子達が汚れて傷つき荒んでいく前に、救い出せて本当に良かった。
不妊去勢手術を受けるパパとママ。そうすることで今ある命を守ることができるのです。ペアで受け入れてくれる里親さんを希望します。

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