命を大切に、というなら

3月1日、大崎保健所の保護犬情報に、妊娠していると思われるという但し書き付きで、岩出山町で保護された柴の雑種の雌が掲載されていた。
愛くるしい顔で、体格も「小」となっていて、豆柴と思われた。抑留期間は3日まで。
小柄で可愛い柴系なので、里親さんが見つかる確率も高いと思ったし、妊娠してるなら早いほうが良いと思い、3月4日に譲渡してもらった。職員が、妊娠したから持て余して捨てたのかもしれないと言った。
柴系の子にしては、誰にでも尻尾を振り、声も発しないので、代理で引き取ってきてくれた人が、声帯手術されているのではないかしら?と言うほど、おとなしい性格。
お母さん犬なので、マミーから、まみちゃんと名付けた。
次の日、動物病院へ連れて行ってエコーで診てもらい、3匹以上の子犬が宿っている事が分かった。
獣医さんが、出産まであと2週間くらいかな、と言うので気楽に構えていたのだが、9日の夜、私が勤務から帰宅すると、待っていたかのように力む姿勢を取りだした。
排便したいのか?と、雪の中を歩かせること1 0分、何度も力むので排便ではないとわかり、直ぐに湯たんぽとホットカーペットやバスタオルなどで、寒くないように囲って産み床を作っているうちに、23時に一頭目が破水し生まれ、24時には2匹目を産んだ。
まみちゃんは自分で胎盤の始末から、へその緒をきちんと噛みちぎり、いったん寝てしまった私が4時に見に行ったら オス3メス2、合計5匹の子犬に囲まれて、安心しきった穏やかな表情になっていた。
しかし、興味津々で近づいた我が家の猫に、唸ってぎゃんぎゃんと吠えた。母性本能から子犬を守るために初めて吠えたまみちゃん、声帯がちゃんとあったことがわかった。
人間でも虐待したり、餓死させたりする母親がいる世の中だが、まみちゃんのお見事な出産と、子育ては感動ものだった。
もし、あのまま保健所にいたら、抑留期限が切れた3月4日には富谷町にある県の動物愛護センターに運ばれて、まみちゃんは大きなお腹を抱えてガス室の中で息絶えたかもしれない。
あるいは、まだ保健所に置かれていたとしても、産んだ日と翌日は大雪が降り、保健所のステンレスの犬舎では冷えきっていて、産み落とされた子犬は体温調整が出来ずに育たなかったかもしれない。
今回は、1つの命から、さらに、可愛い5つの命が救えて本当に良かったが、こうした残酷な現実がなくならない限り、人間社会のあちこちで掲げられている「命を大切に」のスローガンは、絵に描いた餅だと思う。