「動物にやさしい町へ」始動

3月11日、アニマルクラブのメンバー11人と、捨て猫を代表して、子猫の「くまたんこ」が、 石巻市役所に、亀山紘市長を訪ね、野良猫の不妊・去勢手術に、市から助成金を出して、地域猫活動を推進してください、とお願いしました。
亀山市長は「人間の福祉もまだまだなので、お金を出すことは難しいが、石巻市の動物愛護推進計画を立てて、できる方策を検討しましょう」と言ってくれました。
市の予算があまり使えないなら、基金を設けて、賛同者に協力してもらうという意見に、紹介議員の阿部純孝市議も同調。
現実的で前向きな話し合いができました。
亀山市長宅でも、かつては猫か゛20匹もいたこと、現在は野良猫3匹に不妊手術を施して、小屋を作って住まわせている話題も出て、くまたんこの愛らしさもあって、和やかで堅実な話し合いができたと感じています。
23日からの市議会では、もう1人の紹介議員の今村正誼市議が、この件に関して市長に質問、答弁を求めてくれます。
どう進展していくのか、注目です。

石巻市長に渡した陳情書

(1)陳情の趣旨

私達の命が唯一無比であるように、今、この世に生きている動物達の命も取り返しのつかない、かけがえのないものです。
少子化が進み、飼育されるお宅によっては子供同様に扱われて幸せな一生を送る犬や猫の数も増えました。
しかし、動物達の運命は飼い主次第です。
捨てられて、放浪・徘徊して、日々の食べ物を求めなくてはならない野良猫は、“身近にいる難民”だと感じています。
アニマルクラブには、連日、様々な相談が寄せられていますが、今やその7割は野良猫、捨て猫に関することです。
私達と同じように、野良猫をかわいそう、何とか助けてやれないだろうか、と心痛めている人が大勢いるということです。
しかしながら、現時点では、個々が自分の感情と制約の中で判断・行動しているので、中途半端な手の出し方により、 フンをされる、鳴き声がうるさい、物置などで子猫を産んでしまうなどの近所迷惑を引き起こしたり、野良猫の数を増やす結果を招いたりしています。
市が、どう対処することが猫にとって、人間にとってもベターなのか、という指標を示して助成策を講じることで、野良猫による被害も軽減されると思い、お願いに参りました。

(2)陳情の経緯と内容

国は2005年に改正動物愛護管理法を公布、これを受けて、宮城県でも2007年に動物愛護推進計画を策定して、10年後には行政機関が引き取る犬、猫の頭数を半減する計画を立てました。
処分しなければない動物の数を減らす一番の有効策は、捨てる命は生ませない『不妊・去勢手術』を実施することです。
しかしながら、一頭の手術費用は、通常雌が22000円前後、雄で12000円前後かかり、入院に際しては伝染病の混合ワクチン接種が条件となりますので、4種混合ワクチン代と、初回ワクチンを受ける前に、 猫伝染性白血病・猫エイズに感染していないかどうかを調べる血液検査の費用を含めると、雌で30000円、雄でも20000円を超える金額になってしまいます。
日々、相談の電話に応対していると、この金額がネックになって、なかなか不妊・去勢手術に踏み切れないことがわかりました。
もっと安く手術を受けることができれば手術を受けられる猫が増えるのに、という想いに協力してくれる獣医師と出会い、2008年4月1日より、週1回の「不妊センター」を開院しました。
ニーズがあり、2010年1 月からは、週2回に増やして、通常の約半額にて不妊・去勢手術とワクチン・血液検査などを実施しています。
「不妊センター」が稼働して、より明確になったことは、犬より小柄で、吠えないし、散歩もしなくていい猫は、多頭飼育されていたり、 飼ってはいけない住宅で飼われていたり、高齢者や心の病の人が気持ちの拠り所にしているケースが多いということです。
それゆえ、増やしてしまいやすいし、無責任になりがちです。
私達は車のないお年寄りや生活保護世帯の猫の送迎を手伝い、費用も年金が入った都度の分割払いにして、手術が受けやすくなるように配慮しています。数が多くて、支払いが困難な人には、助成金も出しています。
しかし、それでも、石巻中の猫を私達のNPOだけで避妊・去勢するのは困難であり、是非とも石巻市と、石巻獣医師会などの協力が必要です。

全国を見ると、猫に不妊・去勢手術に助成金を出している市や町は、年々増えてきています。
飼い主のいない猫に限定しているところと、飼い猫も対象にしているところがあります。資料を添付しますので、ご参照ください。

財政困難の石巻市に、多くの予算を取って欲しいとは望んではいません。
私達も基金を募って資金を集めます。
必要なのは、金額より、市を挙げて動物愛護推進計画を実行することだと思います。
野良猫に不妊・去勢手術を施し、餌やりやトイレ設置のルールを決めて、一代限りの命を見守る地域猫活動を石巻市でもモデル地区を設けてスタートしてください。すでに、アニマルクラブに相談されている町内会もあります。
近年、田代島が猫の島として脚光を浴び、大勢の観光客を集めています。
石巻市の経済効果上は喜ばしいことではありますが、食べ物が豊富になり、楽して餌が貰えるようになると、子猫の出生率・生存率が高まって猫が増えすぎるのではないかという、懸念もあります。
動物で観光ブームを呼んだ土地では、ブームが去った後に、増え過ぎた個体数に苦慮して、時には処分に及んだ事態もありました。
せっかくの好印象を守り、石巻市に大勢の人を呼び続けるためにも、先見の明を持ち、問題が深刻になる前に対処してください。
そして、名実共に『動物にやさしい町、石巻』になる努力をすることは、動物が恩恵を受けるだけでなく、石巻市のイメージアップにつながり、次代を担う青少年に対しては、“言い訳や建前ではない、命の尊重”を示すことになるのではないでしょうか。
長い間、日本では、飼えなくなった犬や猫、町を放浪・徘徊して迷惑を引き起こす犬や猫を保健所に集めて、殺処分することで解決としてきました。
私は中学生の時に、そのやり方はナチスのアウシュヴィッツと同じだと感じて以来、30年以上、動物達の現状を知らせ、共生を啓発するパネル展や出版を続けてきました。
動物の問題は人の心の問題だと痛感しています。“動物にやさしい町”は、お年寄りや社会的弱者にもやさしい町になると思います。

私達は、60匹余りの行き場のない猫と犬の世話をして、市民からの相談を受け、できる限りの協力をしています。
ホームページや「石巻かほく」のペット情報コーナー、市内で開催されるイベントに参加して、捨てられた猫や犬の飼い主を探しています。
全国でのこうした地道な活動が長い時間を経て、人の心に本来備わっていた慈愛や正義を呼び起こして、法律が改正され、マスメディアが動物問題を頻繁に取り上げるようになりました。

アニマルクラブは平成8年に、8400人分の署名を集めて石巻市に不妊手術の公費負担を含むペット条例制定を求める陳情を行い、平成10年には石巻保健所の犬猫収容施設の改善等を請願しましたが、いずれも形にはなりませんでした。
しかし、十年余りの時を経た今、もう“殺すことで解決としない”世の中に変わらなければなならないと思います。
「まず生かせ、ものの命と人の知恵」____ これは、曹洞宗の教えですが、石巻市の動物行政の基本理念にして、早速の実行力を見せていただけたら、私達は石巻市民にはたらきかけ、精一杯の尽力をして参ります。